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-----　前田さんへの追悼文　-----　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ベア（石川利子） 　　みね子さんから最後の年賀状をいただいてから一年が過ぎようとしています。 　覚悟を決めた彼女にかける言葉も無く、ペンも進みませんでした．思い切って電話をかけると、電話にご主人様が 　出られました．夜８時頃なのにもう寝ているとのこと、病状をお聞きしても心配をかけないように、心配りのある 　お返事に、御夫婦で耐え乗り切らねばならない事もあると納得しました。 　　最初のガンの手術の後に、ご主人様が心配して仙台から帰ってきてくれたと、嬉しそうに話した彼女を思い出します。 　仕事の理由で長く別れて暮らす二人を見て”どうなっているんだ？”といぶかしむ同窓生がいましたが、二人にとって 　それぞれの人生の目標を活かす最良の方法だったと思います。 　　それでも彼女の心には妻として勝手をしているという思いもあったようです。 　　お嬢さんの卒業を機に父娘でアメリカ旅行をし帰国後お嬢さんに「お母さん、お父さんと別れてあげて、一人で家事をする 　お父さんが可哀相だから」と言われたそうです。仕事と家事の選択に悩み、ご主人に離婚を提案したら「このままで良い」との返事を 　もらったそうです。 　それぞれの人生を楽しみながら、苦しい時は支え合う家庭を築いていたと思います。 　　六根会で熊野古道に行った時にお会いしたのが最後でした。病気が進行していること、ご主人が大阪に帰ってくれたこと、 　歌を習っていること、ダイビングを楽しんでいること、ゴルフを始めたこと、友人を集めてオペラのレコード鑑賞をしていること、 　等々人生でし残したことを貪欲に楽しんでいることを話してくれました。 　　翌日、熊野古道へ行く車中にメールが入りました。「今阪大で抗がん剤治療を受けている。これが私の生命をささえてくれている」 　という文面でした。 　　前夜のおしゃべりの時には感じさせなかった厳粛な事実を伝えていました。 　 　『あなたの人生、効率が良いよね、子供ひとり産んで孫２人。私は子供３人に孫ひとり』 　『あなたの人生、ご褒美の人生よね、人生の目標にむかって学者としても全うしたし、結婚し子供を産み楽しみも悩みも経験したし』 　　これは生前私が彼女に贈った言葉。今、私は彼女にとって病も悪いものではなかったような気がします。 　長い間別々に暮らした二人が、人生の最後で寄り添う時間を与えられたと思うのです。 　　いさぎよく、最後まで人生を楽しんだ人。高校卒業以来何十年もあわなかった時間があるように、今遠くへ住所変更したから 　逢えないだけ！ 　　私達があなとのことを憶えている限り、あなたは生き続けていると思っています。 　タイミングが合ったら、またカラオケ行こうね。